島牧の自然を訪ねて

以前島牧村の広報に二年間にわたり掲載したものです
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《1》

島牧には、火山活動でできた狩場山系、造山運動でせり上がってできた、
大平山系と地質の異なる山々があり、変化に富む植生になっていて、
春、夏、秋と次々にさまざまな花々がさいたり実なったりします。
春、雪解けの後のブナ林の沢沿いなどで、ピンクの大きな花見かけますが、
「シラネアオイ」といい日本固有種、四枚の花弁のように見えるのは、
実はガク片が変化したもので、島牧では海岸沿いから山の山頂付近まで
見られ、五月から七月ごろまで、群生して咲く姿は、とてもきれいです。
またエンレイソウ、サンカヨウ、ツバメオモト、なども一緒に咲き始め
山は春から初夏を迎えます。

本州の、白根山に多くあったのでシラネアオイ
という名前が付いたそうです。
サンカヨウの花、夏紫色の実になっている
ものをよく見かけます。

《2》
島牧の、村の木になっている「ブナ」木へんに無いと書いて「ブナ」。昔は、薪にするくらい
にしか使い道がないから、木へんに無いと書いたのかどうかはわかりませんが、今、
日本の山々から消えつつあり、その保護などで一番話題になっています。
温帯の代表種と、指標される樹で冷温、加湿(多雪)な気候を好み、南限は九州の中央高地で
北限がここ、島牧、黒松内、付近(最後北限は、蘭越町のツバメの沢)で、特に、島牧の
狩場山、大平山、山麓では純林を作り、とても素晴らしいブナの森になっています。
このブナが北海道に渡ってきたのは、最終氷河期の後今から八千年前と言われていますが、
その後北上を続け島牧までたどり着いたのは、数百年〜数千年前と、学者によって意見は
分かれるようですが、詳しい調査が待たれます。
ブナの仲間は世界に広く分布し北アメリカにアメリカンブナヨーロッパにはオリエントブナなど
冷温帯特有の樹として知られ、ヨーロッパでは、「森の母」と呼ばれ大切にされています。
そんな森を私たちの大地に持つことを、喜びと誇りにし、この森がいつまでも
この森であり続けることを願いつつ目のさめるような、ブナの森に出掛けてみましょう。
ブナの森を歩くには、賀老高原の「太古の森
「樹海の森」の遊歩道がお勧めです。

五月芽吹きから新緑へのブナ林 十月ブナ林は、黄金色に色づきます。

《3》
島牧は、面積約438平方キロメートルですが、そのほとんどが、丘陵又は山々になっています。
今回は、その中でも渡島半島の最高峰狩場山に足を向けてみましょう。
フモンナイ岳、東狩場、オコツナイ岳、などの山々を従えたその最高峰が、標高1520mの狩場山。
この、山々が、火山だということは、今では外観からは分かりにくいのですが、形状的には、
アスピーデ型(楯状)火山で新第三紀から、第四期洪積世といいますから、今から約十二百万年前〜
数十万年前に活動してきた山々で、その後侵食を受け今では火口の跡などはほとんどわかりません。
しかし、五万分の一の地図を見れば、当時押し出した溶岩が、半円形に突き出し茂津多岬や
賀老高原を形作っている様子がわかります。
狩場山への登山ルートは、賀老高原からさらにブナの自然休養林の中の林道を4Km先に
行ったところに登山口がある、千走新道コースからが一般的で登りやすいでしょう。
その他茂津多岬から、前山を越えて頂上に至るコース、賀老高原から東狩場を目指す、
千走旧道コースもありますが距離長かったり、荒れていたりで一般的ではありません。
七月から、十月までが夏山登山期で登り二時間半〜三時間のハイクで高山植物の、
お花畑は、七月〜八月がベストシーズン。
雪の多い山のため湿性の花が多く、シナノキンバイ、イワイチョウ、アオノツガザクラ、
ヨツバシオガマ、ウメバチソウなどの花が咲き競い、頂上からは、駒ケ岳、奥尻島、
積丹半島、ニセコ連山、と三百六十度のパノラマです。
また秋の紅葉は九月末から十月初めがよいでしょう。
なお、山の天候は変わりやすく、七月中頃までは残雪の急斜面をゆくところがあり
軽アイゼンを用意したり、十分な注意が必要です。

7合目付近の雪渓(7月中旬) 頂上からのフモンナイ岳
ヨツバシオガマ アオノツガザクラ

《4》

前回は、渡島半島の最高峰狩場山を紹介しましたが、今回は、
村の花にもなっている大平ウスユキソーが咲く
大平山を歩いてみましょう
狩場山は、第四紀になってからの火山活動でできた山ですが、
この大平山は中世代から第三紀
にかけての堆積層でできた山で、
石灰岩や石炭層もみられる複雑な地質の山です。
標高は、1192mと、狩場山よりは低いのですが、特殊な花の咲く、
石灰岩植生と北限帯のブナ林などが、自然環境保全を図る必要があるとして、
昭和五十二年環境庁より『大平山自然環境保全地域』として保護指定されました。
大平山へは宮内温泉から泊川沿いに約6Km先、“河鹿の湯”という川の中に温泉が
湧き出ているところのすぐ先が登山口で、登り約四時間ほどです。
道は急峻で、やぶこぎなどもあり大変険しい山ですが、六月〜九月にかけて、
ミヤマオダマキ、チシマギキョウ、チョウノスケ草、アツモリソウ、カラフトマンテマ、
ウラジロキンバイ、チシマリンドウ、エゾノホソバトリカブト、等々
珍しいそしてきれいな花々が咲き競い、特にオオヒラウスユキソウは、
日本で咲くウスユキソウの中ではでは、ヨーロッパのエーデルワイスに
一番近い種類という花で【村花】にもなっています。

三十年前、エーデルワイスという名前につられて初めて登った大平山、
そこはまさに天上のお花畑、、、その花々が心ない盗掘やオーバーユース
による踏み荒らし等により年々花の数を減らし危機的状況です。
春には登山口までの道路が整備開通することになり、
この花々たちを次の世代に残せるかどうかが今正念場になっています、
なにはともあれ大平山のお花畑よ永遠と願ってやみません。

登り始め、約二時間でこの第一ピーク
大平タンポポが満開でした。
後ろに見えるのは雪をいただいた、狩場山系
第一ピークから第二ピーク望む、この第二ピーク
あたりの、岩場がこの山のハイライトです。
六月に咲くミヤマアツマギク。 そして七月の中旬になると、
このオオヒラウスユキソウが咲き始めます。
この石灰岩の岩場に珍しい花がたくさん咲きます。 花だけではなくこういう珍しいカタツムリもいます。
〔カドバリヒメマイマイ〕
この山のミヤマオダマキは一段とときれいです。 ウラジロキンバイ

《5》
いよいよ実の秋、そこで今回は、山の幸をお探しに行っててみましょう。
七月の中旬、狩場山登山の帰りに賀老高原で、野イチゴを見つけ、思わず口にして、
疲れをいやしたことがあります。ノウゴウイチゴ、という野イチゴで、
ちょっと小粒ですが、色も形も栽培もののオランダイチゴによく似ていて、
味は酸味が強くて、香りがよく、そのまま食べてもよいのですが、ジャムや果実酒にすると絶品です。
そして、夏も終わりのころ、狩場山のお花畑で、青紫色の実を結ぶのが、クロウスゴやクロマメノキ
まさに野生のブルーベリーで、初秋の山登りの楽しみのひとつ
生で食べてもおいしいし
果実酒にすればとってでもきれいな、ワインカラー。
同じころ、ふもとの林道沿いでは、赤い木イチゴをたくさん見かけますが、これらは、
エビガライチゴ、クマイチゴ、ナワシロイチゴ、などでみな同じように食べられます。
九月〜十月には、ヤマブドウ、サルナシ(コクワ)が実りこのサルナシは、キウイを
小さくした感じですが、酸味、甘み、香りとも、このサルナシの勝ちです。
硬めの物は、果実酒に、熟したものは、生で食べたりジャムに適しています。
島牧の村木はブナですが、このブナの実のるもこのころ、数年に一度豊作になる、のですが、
殻斗(かくと)と呼ばれるからの中に、そばの実をちょっと大きくしたような、
茶色の三角錘の実が二つ入っていて、リスやネズミたちのごちそうなのですが、
皮ををむいて食べてみると、私たちにも、クルミ以上のおいしさです。

ノウゴウイチゴ エビガライチゴ
色づいてきた島牧の村木ブナ ブナの実


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